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旭川家庭裁判所 昭和47年(家)582号 審判 1972年9月22日

申立人 松永清子(仮名)

事件本人 斎藤国夫(仮名)

主文

本件申立を却下する。

理由

申立人は、事件本人の二女であるところ、昭和三五年、松永晃と婚姻したが、晃は現在医療保護を受けて入院中で、夫の母・三人の子供をかかえ、経済的に困窮し、生活保護を受けている実情であつて、事件本人が長らく家庭を顧みない放浪生活を送つていたことも相俟つて、事件本人に関しても公的扶助・処置を希望し、その保護義務者になることを拒否している。

事件本人の妻は、昭和三六年に交通事故で死亡し、長男昌邦は数年前から家出をして現在行方不明であり、二男富男は、現在精神病院に入院中で、長女愛子は昭和二八年に死亡し、三女幸子と四女春江は昭和二四年、当時から事件本人の家庭の生活状態が苦しかつたことなどから三津根清隆、その妻としの養子となつて全く別個の生活を送つている(五女光子は未だ未成年者である。)。

以上生存子女は、いずれもその生活状態・環境に照し、事件本人の保護義務者となるには適切でなく、強いてこれを選任しても上記実情のもとでは、いずれの者も保護義務を適切に遂行しえないことは明らかであり、また、他に事件本人の扶養義務者中に保護義務者として選任すべき適切な者は見当らない。

そこで本件の如き場合は、当初から精神衛生法第二一条により、精神障害者たる事件本人の居住地を管轄する旭川市長がその保護義務者になるべきものと認め、しかるとき本件申立は失当であるので、これを却下すべく、主文のとおり審判する。

(家事審判官 山崎健二)

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